深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ……
人生で一度は口にしてみたいフレーズですよね。ニーチェの名言として知られていますが、意味はよくわからなくても、とにかく使ってみれば「あ、こいつ“こっち側”の人間だな」と思わせることができると思います。
しかしそうは言っても、こちらが覗いているときになぜ、あちらからも覗き返されなくてはならないのでしょうか。ゆっくり深淵の景色を楽しみたいというときに、深淵からジッと見つめ返されてしまっては、せっかくの自己陶酔も台無しになってしまいます。
そこでこの記事では、深淵を覗きこんだときに深淵から覗き返されてしまう原因と、そうなった場合の対処法について解説していきたいと思います。深淵を覗きこむことのメリット・デメリットについても説明しますので、「深淵を覗きたい」と考えている方はぜひ参考にしてみてください!
そもそも深淵とは?
深淵に覗き返されてしまう原因を考える前に、深淵が一体どういうものなのかを突き止めておく必要があります。ニーチェの言葉における「深淵」は、ドイツ語では“Abgurnd”という単語が使われていますが、これは“ab”という接頭辞と“Grund”という名詞が組み合わされた言葉です。
“Grund”は地面や地盤など、何かを支える土台のことを指しています。一方で“ab”という接頭辞は否定のニュアンスを伴い、この場合は「~がない、~が取り除かれた」といった意味を表します。つまり、“Abgrund”とは何かを支える足場のない「底抜け状態」を指す言葉となっています。
世界が底抜けになってしまった状態、つまり永遠にフリーフォールを楽しめる状態を、「深淵」という言葉は表しているといえるでしょう。
深淵を覗くメリット
深淵の意味をふまえたうえで、これをわざわざ覗きこむことで何が得られるかについて考えてみましょう。
絶叫系への耐性がつく
深淵を覗くことの一番のメリットは、やはり落下に対する恐怖心をある程度克服できることでしょう。テーマパークにおける絶叫系の乗り物は、その多くが落下の際にかかるGによって恐怖心を増幅させているため、日頃から深淵を覗いておけば絶叫が苦手な人でもそれなりに抵抗感をなくせると考えられます。
とはいえ、絶叫系のなかには落下Gだけではなく、加速Gや横G、さらにはそれらを複合させた“G-COMPLEX”の使い手も存在しています。あらゆる絶叫系に耐性をつけるには、やはり実際に色々乗ってみるしかなさそうです。そもそも深淵を覗きこむだけでは落下Gも感じることができないので、そのあたりはイメージトレーニングが重要になるでしょう。
深淵を覗くデメリット
深淵を覗く一番のデメリットは、もちろん深淵から覗き返される可能性が生じてしまうことです。しかしそれでは、深淵からの視線を気にしなければ、深淵は覗き放題なのでしょうか。深淵から覗き返されること以外のデメリットも考えてみましょう。
何らかの罪に問われる可能性がある
いくら相手が深淵であるとはいえ、覗き行為そのものは犯罪行為にあたります。しかし、具体的にはどのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。
- 軽犯罪法違反
軽犯罪法の第一条二十三号には、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を拘留または科料に処するという定めがあります。深淵は「底抜け状態」であるため、「住居、浴場、更衣場、便所」である可能性は低いですが、条文に「その他」という文言があることは見逃せません。
つまり、「人が通常衣服をつけないでいるような場所」であれば、それがいかなる場所であれ覗き行為は軽犯罪法違反になるということです。ここで問題は、「深淵において人は通常服をつけているか」ということですが、深淵にいてわざわざ服を着る理由はなく、また深淵に着ていく服を考えるのは大変ですから、深淵では通常人は服をつけていないと考えるのが妥当でしょう。万が一服を着ていたとしても、フリーフォール中に服が脱げてしまうことも大いに考えられ、やはり「深淵のぞき」は軽犯罪法違反にあたるという事実は覆りそうにありません。
深淵に覗き返されてしまう原因と対策
以上をふまえると、深淵を覗きこもうとする人は、法律違反に問われるリスクを背負いながら、絶叫系への耐性をつけるため、あえて深淵を覗きこむ、ということになります。そこまでして深淵に覗き返されてはたまりませんから、しっかりと原因と対策を洗っておきましょう。
深淵の底が意外と浅かったケース
本当の深淵は前述のとおり「底抜け状態」を指していますが、一見深淵のように映っていたものが、実際には意外と底が浅かった、というケースもしばしば存在しています。
底が浅ければ、底にいる何者かと目が合ってしまう可能性も高くなるため、深淵を覗く際にはしっかりと底が抜けているのかを確認しておきましょう。
空間転移・空間操作系の能力者がいるケース
深淵だと思っていたのに、それが空間操作系の能力者によって生み出された人工的な深淵であった場合には、その能力者がどこかしらから覗いている可能性が高いです。あるいは、そこが本物の深淵であっても、空間転移系の能力者であれば瞬時に深淵の内部に到達し、あなたのことを覗き返すことができるでしょう。
空間に関わる能力は非常に対処が難しいですが、往々にして能力者自身の身体能力は低い傾向にあります。あるいは、漫画の種類にもよりますが、能力の使用に際して大きな制約を抱えている場合も少なくありません。自身の能力と相談しながら、忍耐強く深淵の真贋を見極め、周囲の空間に歪みがないかを確かめておくことが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?「深淵」というと「なんだか奥深そう……」と身構えがちですが、意外と身近なところに深淵は存在し、あなたのことを見守っています。法律に触れることを気にしなければ、深淵を気軽に覗きこんでみることで、世界は根本的に無であるという真理に気づけるかもしれません。
なお、深淵に覗き返された際の被害状況はいまだに報告されておらず、具体的にどのようなダメージが生じるのかはわかっていません。この点については詳しい情報が確認でき次第、すぐに掲載したいと思いますので、続報をお待ちいただければと思います。