ま
マーケティング
自社の商品やサービスを、「どのように売り出していくか」という戦略や方針を表す言葉。市場調査や広告施策はもちろん、顧客管理や流通など広範な領域に関わる概念である。
「いかに売るか」はビジネスの成否を直接に左右する要素であり、かつ売り出し方に不安を覚える事業者は無数に存在するがゆえに、広告代理店などにより「ビジネスにおけるマーケティングの重要性」はことさら強調され、現在では「マーケティングのノウハウを売りつけるためのマーケティング」が巷に蔓延っている状況にある。
なお、一部界隈ではマーケティングの名のもとに、「ただの鉛筆を千円で売るにはどうしたらいいか」といった一休さん的「とんち力」が競われているようである。商品・サービスの質にかかわらず、販売を促進する詐術的手法をマーケティングを捉えるのであれば、確かに「とんち力」はもっとも重要な素養となるだろう。ビジネスシーンでは、この「とんち」のことを「パラダイムシフト」と呼ぶことがある。
マーケティングを偏重する企業には、しばしば製造や制作といった「つくる」プロセスを軽視する傾向が見られるが、ともあれ売れれば何でもいいのかもしれない。
マインドセット
環境的な要因によって刷り込まれた物事の捉え方や、考え方全般を指す言葉。「現実をいかに受容し、どのような行動につなげていくか」という枠組みを構成する。ビジネスにおいては「成長型のマインドセット」が重要であるとWebメディアなどで説かれるが、成長型マインドセットとはいかなるものか、それを身につけるにはどうすればいいのか、という点について明確に解説されることはなく、「やればできる、という気持ちを従業員に持たせるには」といった精神論をカタカナ語の多用によって権威づけようとする記事がほとんどである。
マインドマッピング
アイディアや記憶を放射状の図に落とし込むことで、頭のなかを整理すること。「マインドマップは脳内の構造に近いため、効果的に思考を整理できる」と喧伝されているが、「脳内の構造」が何を指しているのかはよくわからない。マインドマップによって思考が整理できない人間は、正しい脳の構造を持っていないということらしい。
なお、“Mind Map”は提唱者のトニー・ブザンによって商標登録がなされており、マインドマップ作成ソフトとして公認されているのは「iMindMap」だけである。
ママ名刺
一部の保育園や幼稚園などにおいて、ママ友たちがカードバトルに興じる際に用いられるアイテム。夫の勤務先をはじめとする記載事項や、名刺のデザイン・素材などによっても強弱が変わる。煌びやかな画像に満ちたSNSのリンクを記載することで、特殊効果を付与することもできる。
マリアージュ
フランス語で結婚のこと。転じて、相性のよいさま。とくにフランス料理において、ワインと食材の絶妙な相性を言い表す際に用いられる。
フレンチという場に高揚し、冷静な判断力を失った仲人によって結婚を無理強いされた結果、不幸な結婚生活を送るカップルも多いという。
み
見える化
組織の現状における問題点や課題、目標など、漠然としている事象を明確な指標に落とし込むことによって見えるようにすること。可視化。
「可視化」ではなく「見える化」とすることにより、捉えがたい事象の本質を切り取る洞察力と、客観的な形に整理できる手腕とを同時にアピールできる。洞察力と手腕、いずれが欠けても「見える化」を喧伝することはできないので注意が必要である。
港区女子
東京都港区に何らかの形で関わりのある女性のこと。港区で生まれ育った女性、港区で事業を営む女性、港区在住の女性など、一般に富裕層を指す言葉として用いられる。しかし一方で、六本木で男にシャンパンをおごらせ、タクシー代として「ギャラ」を請求することで生計を立てる「プロ港区女子」の存在も確認されており、ともかく金と権力の臭気漂う言葉になっている。
む
昔
過去のある時点。過去のなかでも、とりわけ記憶との相関性が強かったり、共同の記憶に関わるポイントを指すことが多い。アルコールとともに鮮明に呼び出され、人間の脳を支配し、発話内容の9割を占めるようになる。
その場にいる人間たちがその記憶を共有していれば、これ以上ないほど場は盛り上がるが、誰も記憶を共有していない場合には単なる昔語りとして嫌悪の対象となる。
め
メソッド
方法や手段、やり方など、何らかの目的を達成するために採用される行動の道筋のこと。日本語で「方法」というと、シンプルに「目的達成のための手段」を指すが、「メソッド」ということで何かそれが「体系的に構築された理論」にもとづく手段であるかのような錯覚を引き起こすことができる。
すなわち「メソッド」という言葉は「それを裏打ちする根拠」の存在を強く示唆するのであるが、こと「金を稼ぐ方法」「精神的に生きやすくなる方法」「健康になる方法」など不安を容易に解消できると称する者によって提唱される「独自のメソッド」は、当サイトの統計メソッドによれば98%が詐術である。
メルツェデス
ドイツの自動車メーカー、メルセデスベンツのこと。「間違いだらけの自動車選び」で知られる自動車評論家・徳大寺有恒による呼称であり、いわゆる「ツウ」の間では長らくこの呼び名が親しまれていた。同氏は歯に衣着せぬ自動車評論のほか、メーカーや車種名を原語の発音に近い形で表記することでも奇妙な人気を博し、「メルツェデス」のほか「ジャグァー」の表記も今なお某巨大掲示板などで好んで用いられている。
なお、ベンツのカーナビゲーションシステムは現在「Hi, Mercedes」の呼びかけによって起動する音声認識システムを搭載しているが、これに「メルツェデス」の呼びかけが認識されるのかは徳大寺ファン最大の関心事となっている。